授業から抜け出した午前中の空は
SB
隣が寂しい教室は、教師の吐き出す神経質な空気で淀んで静まり返っていた。
グラウンドの土が陽を浴びてふかふかに見える。寝転びたい。
先輩ゆずりでボロボロの机に落書きばかりしている彼は、まだ来ない。
どうせまたどこかで寄り道でもして。野良猫とかかまったり。
コンビニの駐車場で寒いのにアイスをかじったりしている。
(季節感って言葉を多分彼は知らない)
ねえ、やけに暗い顔で淀むことなく近づいてくる別れの時を君は知らないでしょう
足取りが軽いわけでもないのに、滑るように静かに、それでいて重苦しい。
逃げることが出来ないとまどいと、どうしようもないことを知った心の葛藤を。
ぶつける場所がどこにあるのか彷徨っている間も、君は駐車場でネコとアイスだ。
そばにいる事が出来なくなるから寂しいとか、一緒に遊べなくなるから嫌だとかそういうことじゃないよ。
きっとクラスも離れて、僕ら家も遠いし、君は高校に入ったらテニスをやめる。
そんなことを頭のなかでグルグル繰り返している時の僕の気持ちが君にわかるか。
君とそのまわりのもろもろが、
足をひきずって、何度も振り向きながら「ほんとは行きたくないんだ」なんて顔をして
去っていく音がすることが僕にとってはたまらなく怖かった。
そんなネガティブシンキングにとりつかれた僕に気付いたのか気付かないのか
こうやってなんとなく、
やたらと寂しさを増幅させるような時間にサボりやがってと悪態をつきたくもなる。
まるでアメとムチだ
黒板を写す手も寒さで凍えそうな心持ち。
薄汚れた窓の向こうとこちらがわで隔てられた君と僕。
土煙で均等に曇ったその窓を、特に意味も無く眺めていたら
下のほうに、よく子供がやるように指で何事かなぞられたいた。
三時間目 部室でまってる
彼はこの文字列を右手の人差し指でなぞって、
汚れた指先を、制服になすりつけてしまったかも
「せんせい、きぶんがわるいのでほけんしつにいきます」
授業から抜け出した午前中の空は
君の都合の良い目から何色に見えるか教えてほしい
もし同じ色をしていたなら、別れに背を向けないで
二人してつかみかかるくらいの根性で会いに行こう
FIN