でっちあげでいいんだ、ひとつだけ
本当は君にあげたいものがあった
薔薇だとか百合だとか派手なのは好きじゃないよね
君に、手のひらに乗るくらいの小さな気持ちを



花言葉は君の












鋭い稲妻が地面に突き刺さると同時に、レッドのカメールは倒れた。

「…っくしょ…」
「ははっ!やっぱりまだまだだな、おまえ」

小気味よい音を立てて、グリーンは手持ちのピカチュウをボールに戻した。
強烈な電撃に痺れ地面に伏せたままのカメールを、唇をかみ締めながら
レッドは見つめ、何も言わずにボールに戻してやった。

「タイプの相性もわっかんないのかよ、そんなんじゃ図鑑の完成なんて100年先だろうな」

嘲笑さえも含んだ目でレッドを見下ろすと、グリーンは片手でボールを腰のベルトに付けながら
もう片手で何かをレッドに放ってよこした。

「これでもつけときゃ、おまえのなら直るだろ」

ひらひらと手を軽く上げ振りながら去っていくグリーンを見てレッドは力なくその場に座り込んだ。

成す術もなく倒れていった仲間に申し訳なく思うと同時に、
自分のトレーナーとしての素質を疑ってしまうほどだった。

確かにグリーンは努力している。

相性や技の組み合わせに関しては殊更よく、旅に出る前から勉強していた。

自分も同じように頑張っているつもりだった。
実際、突発的なバトルでは、苦手な相性の相手であっても
技と機転で切り抜け滅多に負けることなど無かった。
レベルも十分に上げていたつもりだったし、
順調にジムリーダー戦も勝ち抜いていた。

しかし、何をするにつけても、グリーンは自分より一歩抜きん出ているのだった。

追いつこうとすればするほど、焦りでミスをすることも多くなった。
かといって気にしていないわけでもないのに、ボーっとしていたら大きな差をつけられてしまう。
自分の掲げているものと、それを楽々超えていくライバルの背中を見ることが
とてつもないプレッシャーと焦燥感の渦の中にレッドを追い込んでいた。

そして、自分を屈辱的なまでに打ち負かす度に、満足気な顔をして笑うグリーンを見ると、
何か胸の奥で疼く怒りとは違うものを感じていた。

ポケモンセンターに向かうため立ち上がったレッドの足元に、何かが落ちている。
先ほどグリーンが放ったものだ。上からの態度にイラつきながらも、何か
気遣いをして渡そうとしたものかもしれないと、レッドは手を伸ばして、目を見開いた。

旅に出たばかりの頃よく使っていた安価な傷薬がそこにあった。

これで回復出来る体力など、今となっては雀の涙に等しい。
バカにされたのだ、と気づくのに時間は要らず、
手のひらに乗せた薬のチューブを力任せに握り締めた。
いままで自分自身のなかで抑えていた気持ちが音をたてて弾けていく。



この屈辱を倍にして味わわせたい
もう二度とあんな顔で笑えなくなればいい



無意識に浮かんだ笑みを何処へともなく向けて、
レッドは暗くなり始めた道をポケモンセンターへ歩んでいった。