汚れた衣服を脱ぎまとめ、グリーンは寝巻きに着替えている最中だった。
ポケモンセンターに来るトレーナーの殆どは、ポケモンの回復だけでなく幾晩かの宿としてここを訪れる。
簡素なベッドとシャワールーム、ランドリーなどが備え付けられていて、旅の途中には重宝する場所だ。
多くのトレーナーが利用するために、一部屋に入るだけベッドが詰め込まれていた。
当然仕切りは薄いカーテンがベッドを囲むようにあるだけで、
以前誰かのボールの中のカビゴンのいびきが酷く一睡も出来なかったこともあった程だった。
ただ今日は、何故だか自分の他には僅か数人ばかりしかトレーナーはいないようだ。
まとめた衣服を持ってランドリーへ行き、ぼんやりしていると不意に後ろから声をかけられた。
「こんばんわ、グリーンさん。お洗濯ですか?」
「あ…どうも」
ジムリーダー戦を次々と勝ち抜いてきたグリーンは、オーキド博士の孫ということも手伝って
新聞やテレビなどにひっきりなしに取材をされていた。今ではどこに行っても名を覚えられている。
グリーンは洗濯の終わるまでの時間つぶしにと、洗剤の補充をしにきたジョーイととりとめのない話をした。
「あの…今日は珍しくひと、少ないですよね。」
「そうそう、隣町で大掛かりなコンテストだったかしら?なにかイベントがあるみたいなの。
だから昨日からトレーナーさんたち、一斉に隣町に向かって行ったのよ。
さっき電話があって、もう大変らしいの。ぎゅうぎゅうだから手伝いに来てほしいって。」
そういえば、さっきレッドくんが受付にいたの、とジョーイは液体洗剤を注ぎながら続けた。
レッドもグリーン同様ジム戦を順調に勝ち上がっていたために、少しばかりは名を知られていた。
「ああ…さっきもバトルしてきましたから。」
「そうなのね、レッドくんのコたち回復に時間かかってるみたいでね。
パソコン使ってたから予備のコ連れてってたのかしらね。」



ジョーイが立ち去った後、グリーンは部屋に戻りすっかり乾いた衣服をリュックに詰めていた。
ポケギアのアラームを早朝にセットする。
明日は特に用事もないので、ジョーイの言っていた隣町のイベントとやらに行こうと考えていた。
時刻は深夜12時を少し過ぎた頃だっただろうか。
既に部屋の照明は落とされ、枕元にある簡易ライトを頼りに明日の準備をしていた。
ランドリーに行く前までは空いていた隣のベッドに人の気配がする。
恐らくはレッドだろう。まだごそごそと何か物音がしている。

(スタートは同じだったはずだけど、…いつまでも学習しないヤツだな。)

ただ追いかけてくる速度だけは目覚しいものがあったので、グリーンとて悪戯に
レッドを煽って馬鹿にしているつもりではなかった。
もっともっと自分に近づいてくればいいのにと、密かに思いながら
まだ幼さ故の感情のコントロールを上手く出来ていないことには、気づいていなかったのだから。

色々と思うことがありながらも布団に潜りこんで目を瞑っているうちに、
グリーンは浅い眠りに落ちていった。