―――――――ポン ポンッ







10分も経たない時だったろうか、
足元で、確かに、モンスターボールが開いたときの音を聞いてグリーンは目を開けた。
「……?」
目をこすり訝しげにカーテンの向こうを見据えようと、上半身を起こしたときだった。
「…ッ、ぐ…っは…!」
どこかで嗅いだことのある甘い匂いが、濃い霧のようになってグリーンを襲った。
突然のことで思い切り吸い込んでしまった、喉が焼けるように熱く、苦しい。
「んっ、う…!」
とっさに自分のボールに手を伸ばすよりも早く、
ボールが床に転がる音とそれを弾いたツルが目に映った。
と、同時に何本ものツルがベッドの下から這い出てきて、
あっと言う間にグリーンの手足を縛りつけ口に枷をした。
「んー!う…!」
ツルが両手を胸の前で、両足を折り曲げた状態で縛りつけ一切身動きがとれなくなった。
混乱する頭の中で必死に考えるが、先ほど吸い込んだ甘い煙が
縛られた手足だけでなく思考さえも痺れさせてきているようだ。
(…この…におい……ラフレシアの蜜、か…?)
グリーンはだんだんぼんやりとしてくる頭の中で思い出していた。
ラフレシアの蜜は、野生のもの以外では、
ラフレシアがトレーナーによく懐いているときでないと採取することは出来ない。
独特なとても甘い香りが、少量ならばアロマテラピーや香料に使われるが、
多量だと人体に害を成す。
手足の痺れ、めまい、発熱、脱力感・・・そして

「俺のラフレシアの蜜は、少し特別らしいんだよね。」
簡素なマスクをしたレッドがラフレシアを抱きかかえ、ベッドに腰をかけた。
「俺はもう耐性ついちゃってるからこんなマスクでも防げるんだけどさ、」
「お利巧なグリーン君はこの蜜が何に使われてるか…知ってるよね。」
身動きひとつ出来ないままのグリーンの顔の横にレッドは手をついた。
少しも怖気づかないグリーンの瞳をまっすぐに見ながら、笑顔を崩さずに
「フツーに育てたヤツより何倍も効果強いらしいから。…試してみたくてさ。」
言葉が終わるか終わらないかだった。
なにかねっとりとした液体が服の上から垂らされる不快な感触。
レッドの手がグリーンの口を塞いでいたツルをどけ、あごを掴み上に向けさせる。
「…こんなことして、どうなるか…わかってるのか」
声を震えさせまいと、毅然としてグリーンは言った。
「その状態でよくそんなことが言えるね。」
瞬間、レッドの指が口に差し込まれた。
抵抗すればどうなるかなどわかっていた、グリーンは大人しく、流れ込んでくる蜜を
何も考えずにひたすら喉の奥へ飲み込んだ。